肩の痛み

肩関節のしくみ

一般に肩関節は「肩甲骨(けんこうこつ)」と「上腕骨(じょうわんこつ)」とを結ぶ「肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)」をいいます。ほかにも「肩甲骨」と「鎖骨(さこつ)」とをつなぐ「肩鎖関節(けんさかんせつ)」、「鎖骨」と「胸骨(きょうこつ)」とをつなぐ「胸鎖関節(きょうさかんせつ)」、「肩甲骨」と「肋骨(ろっこつ)」とをつなぐ「肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)」などがあります。また、肩関節は人間の身体の中で最も動かせる範囲が広い関節です。そのため肩関節は比較的ゆるい構造になっています。この不安定さを補うために、肩関節の周りにはしっかりとした関節を包むふくろ(関節包)と棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉の腱から構成される腱板(けんばん)があり、お互いに上腕骨頭を包みこむようにして肩関節を守っています。

代表的な肩の疾患

肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)

肩関節周囲炎は、40~50代に多く、肩が痛くて動かせない症状の病気をいいます。これは肩関節の周りの関節包や靱帯、腱などの組織の老化による変性や炎症によって起こります。また肩関節周囲炎は一般的に「五十肩」と呼ばれます。
症状は、肩から腕にかけて痛くなり、腕が挙げられなくなります。一般的には徐々に痛みが増してくることもありますが、数日で急激に痛くなることもあります。また、痛みによって肩の動きもあらゆる方向へ制限されます。それによって、特に髪をとく動作、背中や腰の後ろでエプロンのひもを結ぶ動作、また洋服の着脱動作などが困難になります。

腱板損傷(けんばんそんしょう)

肩板損傷は、肩の打撲や肩を下にして倒れたり(直達外力)、手や肘をついて転倒したり(介達外力)、重いものを外側に持ち上げようとしたとき(牽引力)などによく起こります。腱板で最も損傷されやすいのは棘上筋です。この筋肉は肩を横に広げたときに肩峰によって圧迫、摩擦を受けやすく、骨との付着付近は血行も乏しいため、年齢とともに変性しやすく、断裂も起こしやすくなります。主症状は痛みと運動障害です。自分で肩関節を横に挙げたり、肩を90度横に広げたまま保持することが困難になります。

肩関節脱臼(かたかんせつだっきゅう)

肩の関節は不安定な構造になっている為、さまざまな靱帯や筋肉、軟骨で保護されていても、外傷に弱く衝撃を受けると、関節が外れる脱臼を起こす場合があります。
前方に外れる前方脱臼が圧倒的に多く、かなりの痛みを伴います。脱臼した時は整復してから固定します。肩関節は、一度脱臼すると再発しやすい部分なため、運動療法などのリハビリが必要です。

代表的なスポーツ障害

野球肩

野球肩とは、投げる動作の時に、肩の痛みがあるため思うようにボールを投げられない状態を総称した診断名です。主に投球動作の繰り返し(使い過ぎ)が原因で、肩の筋肉や靭帯などの組織に炎症、小さな外傷、摩耗が生じて起こります。そこには、さまざまな病態が含まれています。例えば、筋肉や腱の炎症、肩の周りの筋肉(腱板)や軟骨の損傷、引っ掛かりなどが痛みや雑音の原因になります。しかし、野球肩になるとこれらの病変が単独で存在することは少なく、いくつかの病変が混在して肩の障害を引き起こしていることが多く見られます。また、ある1つの病変が存在することで2次的にほかの病変が引き起こされることもあります。また、野球以外でも水泳やテニス、バレーボールなどでも肩を傷めることがあります。

高齢者に多い骨折

上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)

高齢者が歩行中に転倒したり、手をついたことで、肩のつけ根の上腕骨の上の部分(頚部)が折れることがよくあります。これは年をとるとともに骨がもろくなる為に折れやすくなるわけです。特に50代以上の女性に多く起こりやすい骨折です。
折れ方にはいろんなタイプがあります。ずれ(転位)が少ない簡単な折れ方の場合には、三角巾固定や包帯固定、あるいはハンギングキャストという、手を吊り下げるギプス固定をすることで骨折は治ります。折れ方がひどく、転位が大きいときには手術をして治すこともあります。手術ではプレートでとめたり、釘でとめたりすることもありますし、人工骨頭に変える場合もあります。